高値で取引される 黒毛子牛

 2010 年3月に宮崎県で発生した口蹄疫では、牛、豚、水牛 が28万頭殺処分されたがそのうち牛は 7万頭が処分された。2011年3月の福島原発事故では、高濃度の放射性セシウムを含む稲わらが肉用牛に餌として与えられたとして問題になった。更に、同年 8月には、和牛オーナー制度で資金調達し、黒毛和牛の生産を全国展開する 「安愚楽牧場」 が東京地裁に民事再生法の適用を申請し、保全命令を受けた。負債総額は 4,300億円、出資者は 7万人という。黒毛和種を取り巻く ニュースは暗いものが続いたが、久しぶりに明るいニュースがでた。それは、子牛の取引価格が4ヶ月連続で上昇し 2月の子牛取引価格は1頭 424,500円 (全国平均)で、11ヶ月ぶりの高値となったというのだ。 口蹄疫の影響で子牛の出荷頭数が減っているのに加え、肥育農家が牛肉輸入の規制緩和を見越し、品質面で競争力のある黒毛和種に切り替えているからだ。肥育農家は通常生後 8~10ヶ月の子牛を全国のセリ市場から買い入れ、20ヶ月前後肥育して枝肉で出荷する。高値取引の理由は、子牛の全国有数の生産地である宮崎県の生産量が減少していることもあるが、今後 TPP の参加により、関税撤廃後輸入牛肉と競合する交雑種肥育からの切り替え需要が相当あるはずだ。