中国の賃金上昇と企業立地

 ゼネラル・モーターズは、再上場から 1年後の昨年9月 年金・医療保険などを含めた時給水準を最低 20㌦まで下げることで労組と合意した。それは かつての4分の1 である。GM は昨年、過去最高の純利益をあげた。その最大の原因は、経営破綻に陥った後の 徹底した人件費削減の取り組みとその成果だ。それに対し中国では、その間に 年平均で15~20%も賃金が上昇しており、更に 2015年までに最低賃金を毎年13%引き上げるという。その結果、低下傾向にある米国の賃金水準を中国の賃金水準が2015年頃に上回るらしい。  日本では、リーマン・ショック 以降賃金の横ばいが続いている。「ベアゼロ」 が常識となり定期昇給も危ぶまれており、このままいけば、2023年頃に日本と中国の賃金は同水準になるという。  さらに、中国の賃金上昇がこのまま続けば、中国に先進諸国の製造業が進出する理由がなくなる。  今までの 中国経済は生産能力を拡大する投資と輸出に過度に依存してきたのだが、この先、個人消費の底上げをしなければ中長期的な経済成長を支えられないという。具体的には、低所得者層の最低賃金の段階的な引き上げをすることにより、これらの所得層の収入を増やし、個人消費の増加に結びつける必要があるのだ。 反面、これをすれば、中国国内における製造業の国際競争力を失わせる可能性がある。なぜなら、グローバル化が進んだ現在において、企業は定住先を持たなくなり企業立地の判断がより厳しくなるからだ。