金融市場の資金移動に注視

  対円で11年ぶりの安値をつけたユーロの動きは、欧州の財政金融危機の深刻さを改めて印象づけた。 欧州危機はアジアや米国その他の新興国にも影響を及ぼす。この、ユーロ急落の背景には銀行の資本不足がある。ギリシャ危機で価格の下がった南欧の国債を大量に保有する欧州主要銀行は、約11兆円の資本が足りないという。 しかしながら、資本増強の動きは鈍く、欧州の経済や金融システムへの信頼が低下している。  一方、米国の景気は回復基調にあるのだが、住宅バブルの後遺症はいまだに続いている。 欧州危機が飛び火すれば米国の金融システムも揺らぎ、米株式相場にも悪影響が及びかねない。  欧州発の信用収縮の影響で、新興国から資金が流出する懸念も強まっており、世界の投資資金がリスクを回避する動きだ。 資金の流れを落ち着かせ世界景気の失速を防ぐためにも、EU 諸国は財政再建と同時に域内金融機関の資本増強を急ぐべきだ。 日本では、日本企業による海外の企業買収が拡大しており、そのこと自体、国内から海外への資金流出を意味し、企業マネーの海外移転が更に加速するようだと、日本国内での国債の消化に不安が生じかねない。